「AGAの治療と一緒にプロテインを飲んだほうがよいのか」「タンパク質が足りないと薄毛になるのか」。この記事は、そうした疑問について、栄養と脱毛を扱った総説(Rushton 2002、Guo & Katta 2017、Almohanna 2019)と、ビオチン・鉄・ビタミンD・亜鉛・コラーゲンの論文、厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」をもとに、わかっていることと、わかっていないことを分けて整理します。
医療に関する注意 :本記事は情報提供を目的としたもので、診断・治療に代わるものではありません。抜け毛の原因の判断と治療方針の決定は医師が行います。持病のある人、薬を飲んでいる人、AGAの治療中の人は、サプリメントを始める前に医師か薬剤師に相談してください。
本記事の立場 :医師個人による執筆・監修は行っていません。論文や公的資料などの公開資料を編集部が整理しています。
AGAと栄養の関係
AGA(男性型脱毛症)は、テストステロンから5αリダクターゼという酵素によって作られるDHT(ジヒドロテストステロン)が毛包に働き、髪が細く短くなっていく脱毛症です。仕組みはAGAとは何かで、進み具合の見方はNorwood分類の解説で整理しています。
栄養を見直して対処できるのは、主に栄養の不足による脱毛です。Rushton(2002)の総説は、栄養と脱毛について分かっていることの多くは、たんぱく質・エネルギーの栄養失調、飢餓、摂食障害の研究から来ているとしたうえで、ほかに持病のない人でも、抜け毛が増えた状態が続く人では栄養の要因がかかわっているようだと書いています。
Guo & Katta(2017)の総説は、抜け毛で受診した人については、病歴・食事の内容・診察で栄養不足の危険因子がないかを確かめ、必要なら血液検査を行うとしています。危険因子がなければ、栄養不足を探すための検査は必要ないとも書いています。不足が見つかれば補うべきで、不足がないのに補って益があるかどうかは、さらに研究が必要だという立場です。
プロテインを飲むとAGAが止まる、あるいはAGAの治療薬の効きがよくなることを示した研究は、今回確認した資料にはありませんでした。AGAの治療の選択肢はAGA治療の種類と選び方に、飲み薬2剤の違いはデュタステリドとフィナステリドの比較に、ミノキシジルはミノキシジルの効果と副作用にまとめています。
タンパク質はどれくらい必要か
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」は、タンパク質の推奨量(ほとんどの人が必要量を満たすと推定される量)を、18〜64歳の男性で1日65gとしています。まずはこの量を食事でとれているかが目安になります。食事だけでは届かないときは、プロテインを食事の補いに使えます。
一方で、髪のために推奨量より多くのタンパク質をとると髪が増える、という研究は今回確認した資料にはありませんでした。Guo & Katta の総説は、アミノ酸やタンパク質のサプリメントの試験はほかの栄養素と組み合わせた製品で行われたものが多く、不足がない人でアミノ酸やタンパク質そのものがどれだけ役立っているのかははっきりしない、としています。
髪を作るタンパク質とアミノ酸
髪の主成分ケラチン
髪の主成分は、ケラチンと呼ばれる繊維状のタンパク質です。ケラチンには、硫黄を含むアミノ酸のシステイン(2つ結びついたものがシスチン)が多く含まれ、シスチンどうしのジスルフィド結合(S-S結合)が髪の強さや形にかかわります。パーマや縮毛矯正は、この結合をいったん切ってつなぎ直す処理です。システインの材料になるメチオニンは、体内で作れない必須アミノ酸で、食事からとる必要があります。
髪は、毛包の奥にある毛母細胞が分裂して伸びていきます。Almohanna(2019)の総説は、毛球の毛母細胞は分裂が盛んで、ビタミンやミネラルはこの細胞の入れ替わりにかかわるとし、Guo & Katta の総説も、毛包は体の中でも代謝の活発な組織の一つだと書いています。栄養が髪にかかわると考えられている理由として、こうした性質が挙げられています。
タンパク質・栄養の不足と抜け毛の研究
- 急な減量とタンパク質の不足 :Guo & Katta の総説は、急な体重減少やタンパク質の摂取量が減ったあとに起きる急性の休止期脱毛(休止期に入る髪が増えて、抜け毛が増える状態)はよく知られているとし、クワシオルコルやマラスムスのようなたんぱく質の栄養失調では、髪が細くなる・抜けるなどの変化が出ると書いています
- リジンと鉄 :Rushton の総説は、必須アミノ酸のリジンが抜け毛にかかわっているようだとし、抜け毛が増えた女性で、リジンと鉄を一緒に補うとかなりの割合の人が反応したという、二重盲検の試験のデータを紹介しています。Guo & Katta の総説も、鉄だけでは反応しなかった慢性の休止期脱毛の女性の一部で、リジンを加えると血清フェリチン(体に蓄えられた鉄の目安)が上がったという研究を挙げています。いずれも女性を対象にした研究です
- ビタミン・ミネラル :Almohanna の総説は、ビタミンやミネラルの不足は脱毛の変えられる危険因子かもしれないとしつつ、補ったときの効果を確かめるには、不足と脱毛の両方がある人を対象にした大規模な二重盲検のプラセボ対照試験が必要だとしています
休止期脱毛は、AGAとは別の脱毛です。急に抜け毛が増えた、髪が斑状に抜ける、頭髪以外も抜けるといった場合は、AGAの治療や栄養の見直しを始める前に、皮膚科で原因を相談してください。ノコギリヤシなど、食品やサプリメントでDHTに働くとされるものの研究はノコギリヤシの比較で整理しています。
プロテインの種類と髪
ホエイ・ソイ・カゼインなど、プロテインの種類ごとに髪への効果を比べた研究は、今回確認した資料にはありませんでした。上の総説のとおり、タンパク質のサプリメントが髪にどれだけ役立つか自体がはっきりしていないため、種類を選ぶ基準は髪への効果の違いではなく、食事で足りない量、おなかの調子、味や価格など、続けやすさになります。
市販のホエイプロテインの価格とタンパク質の量は、プロテインの比較で各社の公式サイトの値を並べています。
食事でタンパク質が足りないときの補いとして、市販のプロテインを1つ挙げます。
- ボディウイング ホエイプロテイン PR ── 人工甘味料不使用のホエイプロテイン(メーカーの表示)。食事でタンパク質が足りないときの補いとして挙げるもので、髪への効果を調べた製品ではありません。
髪にかかわるビタミン・ミネラル
タンパク質のほかに、亜鉛・ビオチン・鉄・ビタミンDが髪との関係でよく挙げられます。どれも、不足していれば補う対象ですが、不足のない人が補って髪が増えることは確かめられていません。食べ物からのとり方は髪に関わる栄養素と食べ物で整理しています。
亜鉛
Guo & Katta の総説は、亜鉛の不足による抜け毛は補えば戻りうるので、危険因子のある人は調べるべきだとし、円形脱毛症や男性型脱毛症などの患者で血清亜鉛が健常者より低かったという研究を紹介しています。一方で、不足のない人が亜鉛を補って髪が増えるかについての情報は限られ、補いすぎると亜鉛の中毒が起こりうるとも書いています。Rushton の総説は、血清亜鉛が低いことが抜け毛の原因になるという広く信じられた見方を支える根拠はないとしています。Park ら(2009)の研究は、血清亜鉛が低い円形脱毛症の患者に亜鉛を補った、対照群を置かない小規模なもので、AGAを対象にしたものではありません。
ビオチン
Guo & Katta の総説は、ビオチンは腸内細菌も作るので不足はまれで、不足のない人でビオチンのサプリメントが抜け毛に効いたという臨床試験はないとしています。Patel ら(2017)のレビューでも、ビオチンで髪や爪が改善したという報告は、いずれも髪や爪の伸びが悪くなる基礎疾患がある例で、健康な人で補う根拠は十分でないとされています。Trüeb(2016)は、抜け毛を訴える女性にビオチンを一律に飲ませることは、不足とそれが抜け毛にかかわっていることを確かめないかぎり、退けるべきだとしています。
鉄・ビタミンD
Rushton の総説は、貧血のない鉄欠乏の女性で鉄の補充が抜け毛に効いたという報告を挙げ、鉄の状態は血清フェリチンで評価するとしています。Guo & Katta の総説は、貧血がない場合に鉄欠乏と抜け毛に関係があるかは、研究からははっきりしないとしています。Rasheed ら(2013)は、慢性の休止期脱毛と女性型脱毛症の女性で、血清フェリチンとビタミンD2が脱毛のない女性より低かったと報告しています。ビタミンDについて、Guo & Katta の総説は、動物実験では毛周期にかかわることが示されているものの、補ったときの効果のデータは乏しいとしています。鉄とビタミンDの血中濃度についてここで挙げた報告(Rushton の総説が紹介する研究と Rasheed ら)は、いずれも女性を対象にしたものです。
コラーゲン
Hexsel ら(2017)は、爪がもろい人がコラーゲンペプチドを毎日飲んだ、1施設・対照群なしの試験で、爪の伸びと割れやすさの改善を報告しています。髪を調べた試験ではないため、髪への効果はこの研究からは分かりません。
とりすぎに注意する栄養素
Guo & Katta の総説は、ビタミンA・ビタミンE・セレンのとりすぎは抜け毛と結びつけられているとし、抜け毛向けに売られているサプリメントにこれらが含まれていることに注意を促しています。Rushton の総説も、栄養補助食品のとりすぎはかえって抜け毛を起こしうるので、不足が証明されていなければ勧められないとしています。
食事とサプリの見直し方
- 食事の量を急に大きく減らさない :急な体重減少やタンパク質の摂取量が減ったあとに、休止期脱毛が起きることがあります(Guo & Katta)。減量するときも、タンパク質を削らないようにします
- タンパク質は推奨量を目安に食事でとる :18〜64歳の男性で1日65gが推奨量です(日本人の食事摂取基準2025年版)。食事で届かないときに、プロテインで補います
- 不足が心配なら、サプリを足す前に確かめる :亜鉛・鉄・ビタミンD・ビオチンは、不足していれば補う対象です。食事の偏りや持病など思い当たることがあれば、医療機関で相談し、必要なら血液検査で確かめます
- 同じ成分のサプリを重ねない :ビタミンA・ビタミンE・セレンのとりすぎは抜け毛と結びつけられています。マルチビタミンと単体のサプリを重ねると、同じ成分をとりすぎることがあるので、成分表示を見比べます
- AGAが気になるなら、栄養とは別に相談する :AGAは栄養の不足とは別の仕組みで進む脱毛です。治療をするかどうかは、医師と相談して決めます
まとめ
- 髪の主成分はケラチンというタンパク質。急な減量やたんぱく質の栄養失調は抜け毛の原因になりうる
- AGAはDHTがかかわる脱毛症で、栄養の不足による脱毛とは仕組みが違う。プロテインでAGAが止まることを示した研究は見当たらない
- タンパク質は、18〜64歳の男性で1日65gの推奨量を目安に食事でとり、足りなければプロテインで補う。推奨量より多くとって髪が増えるという研究は見当たらない
- 亜鉛・ビオチン・鉄・ビタミンDは、不足していれば補う。不足がないのに補って髪が増えることは確かめられておらず、ビタミンA・ビタミンE・セレンはとりすぎが抜け毛と結びつけられている
よくある質問
Q1. プロテインを飲むだけでAGAは止まりますか?
止まるという根拠はありません。AGAはDHTがかかわる脱毛症で、栄養の不足による脱毛とは仕組みが違います。プロテインでAGAが止まる、治療薬の効きがよくなることを示した研究は、今回確認した資料にはありませんでした。タンパク質は食事の一部として必要な量をとり、AGAの治療は医師と相談して決めてください。
Q2. プロテインの種類で髪への効果は変わりますか?
ホエイ・カゼイン・ソイなど、種類ごとに髪への効果を比べた研究は、今回確認した資料にはありませんでした。タンパク質のサプリメントが髪にどれだけ役立つか自体がはっきりしていないため、種類は続けやすさで選び、食事と合わせて推奨量に届いているかを見るのが現実的です。
Q3. 亜鉛のサプリは髪に効きますか?
亜鉛が不足している人では、補うと抜け毛が戻りうるとされています(Guo & Katta)。一方で、不足のない人が補って髪が増えるかについての情報は限られ、血清亜鉛が低いことが抜け毛の原因になるという見方を支える根拠もないとされています(Rushton)。補いすぎると亜鉛の中毒が起こりうるので、飲む場合は製品の表示の量を守り、ほかのサプリと重ならないようにしてください。
Q4. ビオチンのサプリは飲んだほうがよいですか?
ビオチンの不足はまれで、不足のない人でビオチンが抜け毛に効いたという臨床試験はないとされています(Guo & Katta、Patel ら)。不足とそれが抜け毛にかかわっていることを確かめずに一律に飲むことは退けるべき、とする研究者もいます(Trüeb)。飲んでいるサプリメントは、受診や健康診断のときに医師に伝えてください。
Q5. ダイエット中に髪が抜けやすくなったのですが?
急な体重減少やタンパク質の摂取量が減ったあとに、休止期脱毛が起きることがあります(Guo & Katta)。減量のペースを見直し、タンパク質を削りすぎていないかを確かめてください。抜け毛が続く、急に増えた、斑状に抜けるといった場合は、自分で判断せずに皮膚科で相談してください。
改訂履歴
2026年10月1日:同じ問いを扱っていた記事「プロテインは髪に良い?タンパク質と薄毛・髪質改善の科学的根拠」の内容を統合し、総説と論文の抄録・本文と照合して書き直しました。コラーゲン、鉄・ビタミンD、ビオチン、とりすぎに注意する栄養素の節と、よくある質問(プロテインの種類、ダイエット中の抜け毛)を加えています。出典を確認できなかった数値と記述(日本人男性のタンパク質摂取量と推奨量を下回る人の割合、髪のアミノ酸組成の割合、髪の伸びる速さ、プロテインの種類ごとの吸収時間と星の評点・順位、体重別・運動量別のタンパク質の目標量の表、生活のタイプ別の摂取例、亜鉛・ビオチン・ビタミンDの1日量と血中濃度の目標、亜鉛が5αリダクターゼを抑えるという記述、大豆イソフラボンがDHTを抑えるという記述)を削除しました。女性のビオチン濃度を調べた研究(Trüeb 2016)を低タンパク食の根拠として挙げていた記述は、研究の内容に合わせて訂正しました。
参考文献
- Rushton DH. Nutritional factors and hair loss. Clin Exp Dermatol. 2002;27(5):396-404. PubMed: 12190640
- Guo EL, Katta R. Diet and hair loss: effects of nutrient deficiency and supplement use. Dermatol Pract Concept. 2017;7(1):1-10. PubMed: 28243487
- Almohanna HM, Ahmed AA, Tsatalis JP, Tosti A. The Role of Vitamins and Minerals in Hair Loss: A Review. Dermatol Ther (Heidelb). 2019;9(1):51-70. PubMed: 30547302
- Trüeb RM. Serum Biotin Levels in Women Complaining of Hair Loss. Int J Trichology. 2016;8(2):73-77. PubMed: 27601860
- Patel DP, Swink SM, Castelo-Soccio L. A Review of the Use of Biotin for Hair Loss. Skin Appendage Disord. 2017;3(3):166-169. PubMed: 28879195
- Rasheed H, Mahgoub D, Hegazy R, et al. Serum ferritin and vitamin D in female hair loss: do they play a role? Skin Pharmacol Physiol. 2013;26(2):101-107. PubMed: 23428658
- Park H, Kim CW, Kim SS, Park CW. The therapeutic effect and the changed serum zinc level after zinc supplementation in alopecia areata patients who had a low serum zinc level. Ann Dermatol. 2009;21(2):142-146. PubMed: 20523772
- Hexsel D, Zague V, Schunck M, et al. Oral supplementation with specific bioactive collagen peptides improves nail growth and reduces symptoms of brittle nails. J Cosmet Dermatol. 2017;16(4):520-526. PubMed: 28786550
- 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 たんぱく質(たんぱく質の食事摂取基準の表). https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html(2026年9月確認)
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