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AGA・薄毛

フィナステリドと性欲低下|ポストフィナステリド症候群について分かっていること

出典の確認 最終更新 編集方針PR
公開 2026-05-24約11分で読めます編集責任者: 寺本

要点この記事のポイント

フィナステリドで性欲低下やED(勃起機能不全)・射精の変化が起きる頻度を、プロペシア錠の添付文書と国内外の臨床試験で整理。やめた後も続くとされるポストフィナステリド症候群について、規制当局の資料と論文で分かっていること・分かっていないこと、気になったときの相談先をまとめます。

  1. プロペシア錠の添付文書(2023年8月改訂)の頻度区分は、リビドー減退が1〜5%未満、勃起機能不全・射精障害・精液量減少が1%未満
  2. 日本人414名の48週の試験で、性機能に関する副作用は1mg群2.9%、0.2mg群1.5%、プラセボ群2.2%
  3. リビドー減退・勃起機能不全・射精障害には、添付文書に「市販後において、投与中止後も持続したとの報告がある」と注記がある。頻度は書かれていない
  4. 中止後も続く症状は「ポストフィナステリド症候群(PFS)」と呼ばれることがある。根拠は症例の聞き取り・服用していない人と比べていないカルテ研究・規制当局への市販後の報告までで、頻度と因果関係は確かめられていない
  5. 性機能の変化は処方医に相談する。自殺念慮・自殺企図があらわれた場合、添付文書は服用を中止して速やかに医師等に連絡するよう指導することを求めている

この記事の判断材料

結論

服用中に性機能の副作用が出た割合は、試験ではプラセボ群との差が2ポイント未満だった。中止後も続いたとの報告は添付文書に載っているが、どのくらいの人に起きるのか、薬が原因なのか、どのくらいで戻るのかは、今ある研究では分からない。

エビデンスの強さ

中服用中の頻度は、プラセボ対照のRCTのKawashima 2004(日本人414名・48週)と、米国の添付文書の12ヶ月の3試験(1mg群945名・プラセボ群934名)で測られている。中止後も続く症状の根拠は、症例の聞き取りのIrwig 2011(71名)、服用期間の短い人と比べたカルテ研究のKiguradze 2017(11,909名)と、規制当局への市販後の報告までで、頻度と因果関係は確かめられていない。自殺念慮との関連を扱ったのは、副作用報告データベースの不均衡分析のNguyen 2021で、因果関係は示せない型の研究。説明の仕方で報告が増えることを示したRCTのMondaini 2007(前立腺肥大症の男性120名・5mg)もある。

研究結果

  • RCT / N=414 / 2004 / Kawashima 2004
  • 観察研究 / N=71 / 2011 / Irwig 2011
  • 観察研究 / N=11,909 / 2017 / Kiguradze 2017
  • 観察研究 / 2021 / Nguyen 2021
  • RCT / N=120 / 2007 / Mondaini 2007
  • 診療ガイドライン / 2017 / 男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版

Re:Men の解釈

服用中の性機能の副作用は、試験ではプラセボ群との差が2ポイント未満だった(国内2.9%対2.2%、米国の3試験3.8%対2.1%)。中止後も続くケースは頻度が分からないまま、英国と欧州の規制当局が患者向けのカードで注意を促している段階にある。飲むかどうか・続けるかどうかを医師と決める前に知っておく情報として位置づけ、変化に気づいたときに処方医へ伝える材料にする。

今日やること

  1. 性欲・勃起・射精・気分の変化に気づいたら、始まった時期と内容をメモする
  2. メモを持って、次の受診で処方医に伝える(待てないときは処方元に電話で相談する)

この方法を試す前に

  1. うつ症状や自殺念慮の既往がある人は、始める前の診察で医師に伝える
  2. 自殺念慮・自殺企図があらわれたら、服用を中止して速やかに医師等に連絡する(プロペシア錠 添付文書 8.2 の指導内容)。死にたい気持ちがあるときは #いのちSOS(0120-061-338、24時間365日)に電話できる。命に危険が差し迫っているときは119番へ
  3. 性機能の変化に気づいたときは、自己判断で中止・継続・減量せず、処方医に相談する
フィナステリドと性欲低下|ポストフィナステリド症候群について分かっていること のメインビジュアル

AGA(男性型脱毛症)の飲み薬フィナステリドを飲みはじめてから、性欲が落ちた気がする。やめたあとも元に戻らないという話を見かけて、続けてよいのか迷っている。このページは、そうした疑問に対して、プロペシア錠の添付文書、国内外の臨床試験、英国・欧州・米国と日本の規制当局の資料、査読論文で確かめられる範囲だけを並べます。論文は抄録で確かめられる範囲に限っています。

医療に関する注意 :本記事は情報提供を目的としたもので、診断・治療に代わるものではありません。副作用の出方には個人差があります。薬の開始・変更・中止は自己判断せず、必ず医師に相談してください。ただし、自殺念慮・自殺企図があらわれたときは、服用を中止して速やかに医師に連絡するよう添付文書に書かれています[1]。死にたい気持ちがあるときは、#いのちSOS(0120-061-338、24時間365日)に電話できます[16]。命に危険が差し迫っているときは119番へ。ほかの窓口は気になったときの相談先にあります。

本記事の立場 :医師個人による執筆・監修は行っていません。医薬品の添付文書・規制当局の資料・論文等の公開資料を編集部が整理しています。

服用中の性機能の副作用:添付文書と試験の数字

エビデンス:中国内48週のRCTなどでプラセボと比較。群の差は2ポイント未満参照: Kawashima 2004

プロペシア錠の添付文書(2023年8月改訂 第4版。11.2 その他の副作用)は、生殖器の副作用の頻度を次のように区分しています。リビドー減退が「1〜5%未満」、勃起機能不全・射精障害・精液量減少が「1%未満」、睾丸痛・血精液症・男性不妊症・精液の質低下が「頻度不明」です[1]。

臨床試験の中の数字を、プラセボ(偽薬)群と並べます。国内の試験はプロペシア錠の添付文書の臨床成績[1][8]、米国の試験は米国の添付文書[3]、システマティック・レビューはガイドライン[2]によります。

資料 対象 フィナステリド群 プラセボ群
プロペシア錠 添付文書 17.1.1(Kawashima 2004) 日本人男性414名・48週の二重盲検試験 性機能に関する副作用:1mg群2.9%(4/139例)、0.2mg群1.5%(2/137例) 2.2%(3/138例)
米国 PROPECIA 添付文書 6.1(2022年7月改訂) 12ヶ月の試験3件(1mg群945名、プラセボ群934名) リビドー減退1.8%、勃起不全1.3%、射精障害1.2% 1.3%、0.7%、0.7%
日本皮膚科学会ガイドライン2017年版 ランダム化比較試験12件・3,927名のシステマティック・レビュー 性機能障害の相対危険度1.39(95%信頼区間0.99〜1.95)。プラセボ群より上昇する傾向

米国の添付文書は、12ヶ月の3試験を合わせた解析で、これらの副作用のいずれかを報告した人が1mg群で3.8%(36/945名)、プラセボ群で2.1%(20/934名)で、差は統計的に意味のあるものだった(p=0.04)としています。そのうえで、副作用のために服用をやめた人と、続けた人の大半で症状は消えた(resolution)と書いています。症状が消えるまでの期間は書かれていません[3]。国内の試験は1mg群2.9%(4例)、プラセボ群2.2%(3例)で、例数が少なく、この試験だけでは差があるかどうかを判断できません[1]。どちらの試験でも、プラセボ群から一定の割合で同じような訴えが出ています[1][3]。

中止後も続いたとの報告:添付文書の注記

一方で、プロペシア錠の添付文書は、リビドー減退・勃起機能不全・射精障害の3つに注1を付け、次のように書いています(精液量減少には付いていません)[1]。

市販後において、投与中止後も持続したとの報告がある。(プロペシア錠 添付文書 11.2 注1)[1]

頻度は書かれていません。男性不妊症・精液の質低下には、別に「本剤の投与中止後に、精液の質が正常化又は改善されたとの報告がある」という注記があります[1]。

米国では、2011年に「投与中止後も続いた勃起不全」を市販後の副作用の項に加える改訂が申請され、FDA は2012年4月、これを含む改訂を承認しました。承認されたラベルは、中止後も続いた性機能障害として勃起不全・性欲の障害・射精の障害・オーガズムの障害を挙げています(FDA の承認文書)[4]。2022年7月改訂の米国添付文書(6.2)も同じ4つを挙げ、あわせて「これらは大きさの分からない集団からの自発的な報告のため、頻度を推定したり、薬との因果関係を確かめたりすることは、常にはできない」と断っています[3]。

ポストフィナステリド症候群(PFS)について分かっていること

エビデンス:限定的症例の聞き取り・カルテ研究・副作用報告まで。頻度と因果は未確立参照: Irwig 2011、Kiguradze 2017

服用をやめたあとも性機能や気分などの症状が続く状態は、「ポストフィナステリド症候群(Post-Finasteride Syndrome、PFS)」と呼ばれることがあります。2025年のレビュー(Cilio 2025)は、性機能障害・神経精神症状・身体の変化などが報告されているとしたうえで、その存在と位置づけをめぐって医学界に論争があることを整理し、考えられる仕組みとして神経系の変化や遺伝的な素因などを論じています。そのうえで著者らは、文献の結果は食い違うものの、服用した男性に軽視できない身体や心の症状が出ることがありうるとし、処方前にリスクを確かめて説明することを求めています[14]。

主な資料と、それぞれの限界を並べます。

資料 種類 書かれていること 限界
Irwig 2011[9] 中止後3ヶ月以上症状が続いた21〜46歳の男性71名への聞き取り 低い性欲94%、勃起不全92%。服用期間は平均28ヶ月で、中止から聞き取りまで症状が続いた期間は平均40ヶ月 事後的な調査、対象の選ばれ方の偏り、服用前についての記憶の偏り、ホルモン値の測定なし(著者の記載)。対照群がない
Kiguradze 2017[10] 米国の医療機関のカルテを使った観察研究(5α還元酵素阻害薬を使った11,909名) 中止後90日以上続く勃起不全が1.4%。16〜42歳でフィナステリド1.25mg/日以下の4,284名では0.8%。服用期間が長いほど多かった 薬を使っていない人との比較がない(服用期間の短い人と比べている)。勃起不全治療薬の処方などで定義しており、原因が薬かどうかは分からない
英国 MHRA(2024年4月)[5] 医薬品の副作用報告(Yellow Card) 1992年11月〜2024年4月5日に、フィナステリドと性機能障害の報告が426件(1mgと5mgの合計。中止後に続いた例に限らない)。半数近くで、報告時点の転帰が「not recovered」または「not resolved」と記録されていた 自発的な報告で、服用した人全体の中の割合は出せない。中止後に続いた例の数は分けて示されていない

今の資料で分かっていないこと

  1. どのくらいの人に起きるか :米国の添付文書は、中止後も続いた性機能障害を、大きさの分からない集団からの自発的な報告として載せ、信頼できる頻度の推定は常にはできないとしています[3]。上の表の割合は、それぞれの集め方の中での数字です
  2. 薬が原因かどうか :FDA の審査担当者は、副作用報告の多くに服用前の性機能や交絡要因の情報がないこと、臨床試験では症状が元に戻るとされていたことから、中止後も続く性機能障害と薬との因果関係を確定できないとしたうえで、添付文書に載せることには同意しています[4]。2025年のレビューも、存在と位置づけに論争があるとしています[14]
  3. どのくらいで元に戻るか :元に戻るまでの期間を示した資料は、確認できませんでした。Irwig 2011 の平均40ヶ月は、中止から聞き取りの時点まで症状が続いていた期間です[9]。FDA の審査資料の59例の持続期間(Q2)も、ほとんどが報告の時点でまだ症状が続いていた例の、その時点までの期間です[4]
  4. 症状を軽くする方法 :中止後も続く症状に対して、何かの治療を人で試して比べた研究は確認できませんでした(2026年10月に PubMed で「post-finasteride syndrome」を題名・抄録で検索した67件の中に、ランダム化比較試験・臨床試験の型のものはなく、題名を全件見た範囲でも人での治療の試験は見当たりませんでした)。相談の仕方は気になったときの相談先にまとめています

数字を読むときの注意:報告の偏りは両方向にある

エビデンス:中説明の有無で報告率が変わったRCT。5mg・前立腺肥大の男性参照: Mondaini 2007

副作用の数字は、集め方によって上にも下にもずれます。前立腺肥大症の男性120名にフィナステリド5mgを薬名を伏せて1年投与したランダム化比較試験(Mondaini 2007)では、「勃起不全、性欲低下、射精の問題を起こすことがあるが、まれである」と説明された群(55名)で性機能の副作用の報告が43.6%、説明されなかった群(52名)で15.3%でした(120名を割り付け、107名が完了)[11]。説明を受けること自体が報告を増やしうる、という結果です。ただし対象は前立腺肥大症で5mgを飲んだ男性で、AGAの1mgにそのまま当てはめることはできず、中止後も続く症状を説明した研究でもありません。

反対方向の偏りもあります。AGAに対するフィナステリドの臨床試験34件の安全性の報告を調べたメタ解析(Belknap 2015)は、安全性の報告が十分だった試験は1件もなく、26件(76%)は安全性の評価期間が1年以下で、性機能の副作用を少なく見積もる方向の偏りがうかがえると結論しています[12]。試験の数字だけでも、副作用報告の数字だけでも、実際の頻度は分かりません。

気分の落ち込み・自殺念慮についての注意

エビデンス:限定的副作用報告の解析と規制当局の評価。頻度は不明参照: Nguyen 2021

プロペシア錠の添付文書は、重要な基本的注意に次のように書いています。

本剤との因果関係は明らかではないが、自殺念慮、自殺企図、自殺既遂が報告されている。患者の状態を十分に観察するとともに、自殺念慮又は自殺企図があらわれた場合には本剤の服用を中止し、速やかに医師等に連絡するよう患者に指導すること。(プロペシア錠 添付文書 8.2)[1]

この注意は、2023年8月の改訂で加わりました。医薬品医療機器総合機構(PMDA)の資料によると、国内で集まった自殺関連の副作用症例7例(うち死亡1例)のうち、薬との因果関係が否定できないとされた症例はありませんでした。一方で、WHO の副作用報告データベースを使った解析で自殺念慮などの報告が予測より統計的に多かったこと、Nguyen 2021 などの論文で関連が示唆されていることから、注意を加えるのが適切と判断されています[18]。

その他の副作用の表にも、抑うつ症状が「頻度不明」として載っています[1]。WHO の副作用報告データベースを使った研究(Nguyen 2021)では、フィナステリドで自殺関連の報告が他の薬より多く報告される傾向(報告オッズ比1.63)が見られ、45歳以下とAGAで使っている人で強く出ました。年齢・使う目的・2012年の前後で分けた解析(2012年以降に報告が増えていた)から、著者は、関心の高まりで報告が増えた可能性と、若い人が影響を受けやすい可能性の両方を挙げています[13]。

欧州医薬品庁(EMA)の安全性委員会は2025年5月、自殺念慮をフィナステリド1mg・5mg錠の副作用と確認し、頻度は不明としました。あわせて、1mg錠の添付文書に、性機能の問題が気分の変化に関わりうることを加え、包装に患者向けカードを入れるとしています[7]。英国 MHRA も2026年5月の安全性情報で、フィナステリドは中止後も続くことがある性機能障害や抑うつ、自殺念慮と関連があるとし、処方するときにうつ病や自殺念慮の既往を確認するよう医療者に求めています[6]。

デュタステリド(ザガーロ)の場合

同じ5α還元酵素阻害薬のデュタステリドも、ザガーロカプセルの添付文書(2025年8月改訂 第2版)で性機能不全(リビドー減退、勃起不全、射精障害)が「1%以上」に区分され、中止後も続いたとの報告の記載があります[15]。EMA の評価では、デュタステリドと自殺念慮の関連は確かめられなかったものの、作用のしくみが同じため、気分の変化についての情報を予防的に添付文書へ加えるとしています[7]。フィナステリドで症状が出たときにデュタステリドへ切り替えれば起きない、と示した資料は、この記事で確かめた添付文書・規制当局の資料・上の PubMed の検索の範囲では見当たりませんでした。両剤の数字の違いは デュタステリドとフィナステリドの比較 にまとめています。

気になったときの相談先

減薬の手順やサプリメント、ホルモン療法で、中止後も続く症状が軽くなる、または性機能が元の状態に戻ることを示した一次資料は、上の PubMed の検索の範囲では見当たりませんでした。添付文書と規制当局の資料が示している行動は、医師への相談です[1][6][7]。

状況 相談先 資料の記載
性欲・勃起・射精の変化(服用中・中止後) 処方医 MHRA は、性機能障害が出たら医師に相談するよう患者に求めている[6]
自殺念慮・自殺企図 服用を中止して速やかに処方医等へ連絡。夜間や話し相手がほしいときは電話相談 プロペシア錠 添付文書 8.2[1]
気分の落ち込み・抑うつ 処方医にすぐ連絡 EMA と MHRA は、1mg を飲んでいる場合は服用をやめて医師に連絡するよう案内している[6][7]
副作用として国に知らせたい 医薬品医療機器総合機構(PMDA)の「患者の皆様からの医薬品副作用報告」 オンラインまたは郵送で、患者や家族が報告できる[17]

性機能の変化について、服用をやめるか、続けるか、量を減らすかを自分で決めずに、処方医に相談してください。受診のときは、飲みはじめた日、変化に気づいた時期、内容をメモして持っていくと伝えやすくなります。オンライン診療で処方を受けている場合も、処方元の医療機関に連絡できます。

死にたい気持ちがあるときの電話相談として、厚生労働省「まもろうよ こころ」は、#いのちSOS(0120-061-338、24時間365日)や、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556、受付の曜日・時間は都道府県によって異なる)などを案内しています。ほかの窓口と受付時間は、同じページで確かめてください[16]。命に関わる危険が差し迫っているときは、ためらわず119番に連絡してください。

副作用の全体像は フィナステリドの効果と副作用 と AGA治療薬の副作用の一覧 、治療の選択肢の違いや医療機関ごとの違いは AGAのカテゴリページ で確認できます。

よくある質問

Q1. 性機能の副作用はどのくらいの人に起きますか?

日本人の48週の試験で、性機能に関する副作用は1mg群2.9%、プラセボ群2.2%でした。添付文書の頻度区分では、リビドー減退が1〜5%未満、勃起機能不全・射精障害・精液量減少が1%未満です[1]。

Q2. やめれば元に戻りますか?

米国の添付文書は、試験で副作用のために服用をやめた人では症状が消えたと書いています[3]。一方、市販後には中止後も続いたとの報告があり、その頻度と、どのくらいの期間で戻るのかを示した資料は確認できませんでした[1][3]。FDA の審査資料は、副作用報告のデータベースで中止後3ヶ月以上続いたと報告された59例について、持続期間を3〜6ヶ月30%、7〜11ヶ月20%、1〜2年34%、3年以上12%と分類していますが、報告時点の情報で分けたもので、実際の持続期間を表さない可能性があると断っています[4]。報告された例の内訳で、服用した人全体の中の割合ではありません。見通しは、経過を知っている処方医と相談してください。

Q3. ポストフィナステリド症候群は病気として認められていますか?

中止後も性機能障害が続いたとの報告は、日本・米国の添付文書に載っています[1][3]。一方で、PFS という病態の存在と位置づけには論争があり(Cilio 2025)、頻度と原因は確かめられていません[14]。

Q4. 心配なら最初から飲まないほうがいいですか?

服用中の性機能の副作用は、試験ではプラセボ群との差が2ポイント未満でした[1][3]。中止後も続く症状の頻度は分かっていません[3]。飲むかどうかは、効果の見込みとこうした情報を合わせて医師と決める事柄です。うつ症状や自殺念慮の既往があれば、始める前に伝えてください[1]。

まとめ

  • 添付文書の頻度区分は、リビドー減退1〜5%未満、勃起機能不全・射精障害・精液量減少1%未満[1]
  • 日本人の48週の試験で、性機能に関する副作用は1mg群2.9%、0.2mg群1.5%、プラセボ群2.2%[1]
  • リビドー減退・勃起機能不全・射精障害は、市販後に投与中止後も持続したとの報告がある。頻度は不明[1][3]
  • PFS の根拠は症例の聞き取り・服用していない人と比べていないカルテ研究・規制当局への市販後の報告まで。報告の偏りは多い方向にも少ない方向にもある[1][3][9][10][11][12]
  • 性機能の変化は処方医に相談する。自殺念慮・自殺企図があらわれたら服用を中止し、速やかに医師等に連絡する[1][6]

改訂履歴

2026年10月9日:本文の数字と記述を参考文献の番号で1対1に結び、参考文献に研究の種類・人数・限界を添えました。プロペシア錠(2023年8月改訂 第4版)とザガーロカプセル(2025年8月改訂 第2版)の添付文書、米国の添付文書(2022年7月改訂。Drugs@FDA でこれが最新の改訂であることも確認)、FDA の承認文書、英国・欧州・日本の規制当局の資料、論文の抄録を同じ日に取り直して照合し、本文の数字はいずれも原本と一致していました。そのうえで次の点を直しました。服用中の性機能の副作用の差を「プラセボ群を数ポイント上回る程度」としていた箇所(判断ブロック・よくある質問)は、国内0.7ポイント・米国1.7ポイントなので「プラセボ群との差が2ポイント未満」にしました。2025年のレビュー(Cilio 2025)について「仕組みは仮説の段階」としていた箇所は、抄録の書き方(考えられる仕組みとして論じている)に合わせました。英国 MHRA の報告で「約半数」としていた箇所は、原文(almost half)に合わせて「半数近く」にしました。米国の添付文書が症状が消えるまでの期間を書いていないこと、Irwig 2011 の平均服用期間、国内の自殺関連症例7例に死亡1例が含まれることを書き足しました。PFS の節に「今の資料で分かっていないこと」(頻度・因果関係・戻るまでの期間・症状を軽くする方法)をまとめ、FDA の審査担当者が因果関係を確定できないとしたことを書き足しました。PFS の根拠を「対照群のないカルテ研究」としていた箇所は、Kiguradze 2017 が服用期間の短い人と比べた研究であるため「服用していない人と比べていないカルテ研究」にしました。

2026年9月29日:添付文書・規制当局の資料・論文の原文と照合して全面改訂しました。出典を確かめられなかった記述(患者団体の症例数、持続性の性機能障害の推定割合、国内の処方人数からの試算、減薬の手順、サプリメント・ホルモン療法の比較表と期間・費用、生活習慣でホルモン値が上がるとする数字、PFS の経過の割合、動物実験と神経ステロイドの説明)を削除し、服用中の頻度、中止後も続いたとの報告、研究の限界、相談先を一次資料で書き直しました。

参考文献

  1. プロペシア錠0.2mg/1mg 添付文書(オルガノン。8.2 重要な基本的注意/9.1.1/11.2 その他の副作用と注1・注2/17.1.1 国内第Ⅱ/Ⅲ相二重盲検比較試験). (医療用医薬品の添付文書 2023年8月改訂 第4版。試験の割合は24〜50歳の日本人男性414例の48週の試験による。「投与中止後も持続した」のは市販後の報告で、頻度は示されていない) PMDA/KEGG MEDICUS(JAPIC)(2026年10月9日確認)
  2. 日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」日皮会誌. 2017;127(13):2763-2777(CQ1解説=12件のランダム化比較試験・3,927名のシステマティック・レビュー、性機能障害の相対危険度1.39). (診療ガイドライン2017年版。2016年12月までに検索できた文献が対象で、それ以降の報告は反映されていない) 日本皮膚科学会のPDF(2026年10月9日確認)
  3. PROPECIA (finasteride) tablets, US prescribing information, Revised 07/2022(6.1 Clinical Trials Experience/6.2 Postmarketing Experience). (米国の添付文書。6.1の数字は12ヶ月の3試験〔1mg群945名・プラセボ群934名〕。6.2の市販後の報告は、大きさの分からない集団からの自発的な報告で、頻度も因果関係も確かめられないと書かれている。Drugs@FDA で、2022年8月承認のこの改訂〔SUPPL-30〕が最新であることを確認) FDAのPDF(2026年10月9日確認)
  4. FDA, Center for Drug Evaluation and Research. Approval Package for NDA 20-788/S-020/S-021/S-023 (Propecia). Approval letter signed April 11, 2012. (米国の規制当局の承認文書。審査で集計された59例は、1997年12月〜2011年4月の副作用報告のデータベースから選んだ症例で、持続期間は報告時点の情報による。審査担当者は因果関係を確定できないとしている。表紙の承認日「March 11, 2011」は、承認書の申請日〔2011年4〜5月〕・電子署名〔2012年4月11日〕・Drugs@FDA の承認日と合わない) FDAのPDF(2026年10月9日確認)
  5. MHRA. Finasteride: reminder of the risk of psychiatric side effects and of sexual side effects (which may persist after discontinuation of treatment). Drug Safety Update, 29 April 2024. (英国の規制当局の安全性情報。426件は自発的な副作用報告〔1mgと5mgの合計〕で、服用した人全体の中の割合ではなく、中止後に続いた例の数も分けて示されていない) GOV.UKのページ(2026年10月9日確認)
  6. MHRA. Finasteride and Dutasteride: updated safety warnings for psychiatric side effects and sexual dysfunction. Drug Safety Update, 11 May 2026. (英国の規制当局の安全性情報。英国の製品情報についての記載で、日本の添付文書とは別のもの) GOV.UKのページ(2026年10月9日確認)
  7. EMA. Measures to minimise risk of suicidal thoughts with finasteride and dutasteride medicines. 8 May 2025. (欧州医薬品庁の安全性委員会〔PRAC〕の勧告を伝えるニュース。勧告は2025年6月19日にCMDhが支持し、2025年8月22日に欧州委員会が決定した〔EMAの手続きのページで確認〕。欧州の製品情報についての記載で、日本の添付文書とは別のもの) EMAのニュース/EMAの手続きのページ(2026年10月9日確認)
  8. Kawashima 2004: Kawashima M, Hayashi N, Igarashi A, et al. Finasteride in the treatment of Japanese men with male pattern hair loss. Eur J Dermatol. 2004;14(4):247-254. (RCT、日本人男性414名、48週、二重盲検。抄録のみ確認。割合の数字は添付文書の臨床成績で確認) PubMed: 15319158
  9. Irwig 2011: Irwig MS, Kolukula S. Persistent sexual side effects of finasteride for male pattern hair loss. J Sex Med. 2011;8(6):1747-1753. (症例の聞き取り調査〔観察研究〕。中止後も3ヶ月以上性機能の症状が続いたと報告した21〜46歳の男性71名で、対照群はない。著者は、事後的な調査であること・対象の選ばれ方の偏り・服用前についての記憶の偏り・ホルモン値を測っていないことを限界に挙げている。抄録のみ確認) PubMed: 21418145
  10. Kiguradze 2017: Kiguradze T, Temps WH, Yarnold PR, et al. Persistent erectile dysfunction in men exposed to the 5α-reductase inhibitors, finasteride, or dutasteride. PeerJ. 2017;5:e3020. (観察研究。米国の1つの医療機関グループ〔Northwestern Medicine〕の電子カルテで、5α還元酵素阻害薬を使った男性11,909名。薬を使っていない人との比較はなく、服用期間の短い人と比べている。中止後も続く勃起不全は、カルテの記載と勃起不全治療薬の処方で定義。抄録のみ確認) PubMed: 28289563
  11. Mondaini 2007: Mondaini N, Gontero P, Giubilei G, et al. Finasteride 5 mg and sexual side effects: how many of these are related to a nocebo phenomenon? J Sex Med. 2007;4(6):1708-1712. (RCT、前立腺肥大症の男性120名〔完了107名〕、フィナステリド5mg、1年。AGAの1mgの試験ではない。性機能の副作用の説明の有無で群を分けた試験で、プラセボ群はない。抄録のみ確認) PubMed: 17655657
  12. Belknap 2015: Belknap SM, Aslam I, Kiguradze T, et al. Adverse Event Reporting in Clinical Trials of Finasteride for Androgenic Alopecia: A Meta-analysis. JAMA Dermatol. 2015;151(6):600-606. (臨床試験34件の安全性の報告の質を評価したメタ解析。副作用の頻度を推定した研究ではない。著者は Kiguradze 2017 と同じ研究グループ。抄録のみ確認) PubMed: 25830296
  13. Nguyen 2021: Nguyen DD, Marchese M, Cone EB, et al. Investigation of Suicidality and Psychological Adverse Events in Patients Treated With Finasteride. JAMA Dermatol. 2021;157(1):35-42. (WHO の副作用報告データベース〔VigiBase〕の不均衡分析。報告の数の偏りを見る方法で、服用した人の中で起きる割合や因果関係は示せない。抄録のみ確認) PubMed: 33175100
  14. Cilio 2025: Cilio S, Tsampoukas G, Morgado A, et al. Post-finasteride syndrome - a true clinical entity? Int J Impot Res. 2025;37(6):426-435. (レビュー。システマティック・レビューとは書かれていない。抄録のみ確認) PubMed: 39953145
  15. ザガーロカプセル0.1mg/0.5mg 添付文書(グラクソ・スミスクライン。11.2 その他の副作用と注). (医療用医薬品の添付文書 2025年8月改訂 第2版。「投与中止後も持続した」報告の頻度は示されていない) KEGG MEDICUS(JAPIC)(2026年10月9日確認)
  16. 厚生労働省「まもろうよ こころ」電話相談窓口. (公的機関の案内ページ。窓口の番号や受付時間は変わることがある) 厚生労働省のページ(2026年10月9日確認)
  17. 医薬品医療機器総合機構「患者の皆様からの医薬品副作用報告」. (公的機関の案内ページ。報告は安全対策に使われ、個別の助言や結果の連絡は行わないと書かれている) PMDAのページ(2026年10月9日確認)
  18. 医薬品医療機器総合機構「フィナステリドの「使用上の注意」の改訂について」2023年8月29日. (規制当局による添付文書の改訂の説明資料。国内の自殺関連の副作用症例7例〔うち死亡1例〕のうち、薬との因果関係が否定できない症例は0例と書かれている) PMDAのPDF(2026年10月9日確認)

免責事項 :本記事は医薬品の添付文書、日本皮膚科学会のガイドライン、国内外の規制当局の公開資料、査読論文をもとにした一般的な情報提供であり、診断・治療に代わるものではありません。医師個人による執筆・監修は行っていません。医薬品の添付文書・規制当局の資料・論文等の公開資料を編集部が整理しています。副作用の出方には個人差があります。薬の開始・変更・中止は自己判断せず、必ず医師に相談してください。記載内容は2026年10月時点の公開資料に基づきます。

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