AGAの薬を使い始めてしばらくして、シャンプーのときの抜け毛が増えた気がする。薬のせいなのか、別の原因なのか、このまま続けてよいのか。「初期脱毛」という言葉を検索するのは、たいていこの時期です。
このページでは、日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」(以下、ガイドライン)、プロペシア錠・ザガーロカプセル・リアップX5の添付文書、PubMed に収載された論文(原著と総説)の抄録で確かめられることだけを並べます。確かめられなかった数字(外用で何割の人に起きるか、何週でおさまるか、1日に何本抜けるか)は書いていません。
医療に関する注意 :AGAの確定診断と治療方針の決定は医師が行います。本記事は情報提供を目的としたもので、診断・治療に代わるものではありません。効果・副作用には個人差があり、効果を保証するものではありません。薬の開始・変更・中止は自己判断せず、必ず医師に相談してください。女性・小児はフィナステリド・デュタステリドを服用できません(ご家族の女性や子どもが、割れた錠剤や漏れたカプセルの中身に触れないようにしてください)。
本記事の立場 :医師個人による執筆・監修は行っていません。学会ガイドライン等の公開資料を編集部が整理しています。
添付文書とガイドラインに書かれていること
エビデンス:限定的ミノキシジル外用で起こりうるとの記載のみ。頻度と期間の数字はない参照: 男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版
使い始めに抜け毛が増えることについて、一次資料で確かめられた記載は、ガイドラインのミノキシジル外用の項にある次の1文です。
男女ともにミノキシジル外用初期に休止期脱毛がみられることがあり,これが外用中止につながる恐れがあるため,患者への説明が必要である.
「休止期脱毛」は、毛の周期のうち休む時期(休止期)に入って抜けることを指します。この1文には、何割の人に起きるか、何週目から何週目まで続くか、どれくらいの量かは書かれていません。「患者への説明が必要」とあるので、処方を受けるときに医師へ「初期に抜け毛が増えることはありますか」と聞いてよい項目です。
薬ごとに、今回確認した資料の記載を表にまとめます。
| 薬(確認した資料) | 使い始めの抜け毛についての記載 | 関連する記載 |
|---|---|---|
| フィナステリド(プロペシア錠 添付文書、ガイドライン) | 見当たらない | 効果の確認まで「通常6ヵ月の連日投与が必要」。「効果を持続させるためには継続的に服用すること」「増量による効果の増強は、確認されていない」 |
| デュタステリド(ザガーロカプセル 添付文書、ガイドライン) | 見当たらない。副作用の表に「脱毛症(主に体毛脱落)」(頻度不明)があるが、使い始めの頭髪の抜け毛についての記載ではない | 治療効果の評価には「通常6ヵ月間の治療が必要」。6ヵ月以上で効果がなければ中止 |
| ミノキシジル外用5%(リアップX5 添付文書、ガイドライン) | ガイドラインに「外用初期に休止期脱毛がみられることがあり」。頻度・期間の数字はない。添付文書には記載が見当たらない | 6ヵ月以内でも脱毛状態の悪化、頭髪以外・斑状・急激な脱毛があれば中止して相談。「決められた以上に多く使用しても、効果の増加はほとんどなく」 |
| ミノキシジル内服(国内では内服薬として未承認) | 国内にAGA用の添付文書がない | ガイドラインは推奨度D(行うべきではない) |
飲み薬2種について「初期脱毛が起きる」と書かれた資料は、今回の確認範囲(添付文書の用法に関連する注意・副作用・臨床成績の項と、ガイドラインの各薬の項)にはありませんでした。飲み薬で抜け毛が増えたと感じたときも、それが薬によるものかどうかを資料から判断することはできません。
なぜ起こると説明されているか
エビデンス:限定的動物実験での観察をヒトに当てはめた説明。ヒトで仕組みを確かめた研究は少ない参照: Messenger 2004
毛は、伸びる時期(成長期)、伸びるのが止まる時期(退行期)、休む時期(休止期)をくり返しています。休止期の毛は、やがて抜け、同じ毛包から次の毛が伸びてきます。
ミノキシジルの作用の仕組みをまとめたレビュー(総説)(Messenger 2004)の抄録は、「In animal studies, topical minoxidil shortens telogen, causing premature entry of resting hair follicles into anagen」(動物実験では、ミノキシジル外用は休止期を短くし、休んでいた毛包を予定より早く成長期に入らせる)と書き、ヒトでも「probably」(おそらく)同じ作用があるとしています。同じ抄録は、ミノキシジルが毛に作用する仕組みについての理解は「very limited」(非常に限られている)とも書いています。
休止期にあった毛が、次の成長期が早まることで一度に抜ける、というのが初期脱毛のよくある説明です。この説明は、上の動物実験の観察をもとにしたもので、ヒトの頭皮で直接確かめたものではありません。フィナステリド・デュタステリドで同じ説明が使われることもありますが、飲み薬で初期脱毛の仕組みを調べた原著は、今回の PubMed の検索(finasteride または dutasteride と、shedding または telogen effluvium の組み合わせ)では見当たりませんでした。
抜け毛の増え方を記録した研究
ミノキシジル外用:49名の後ろ向き研究
エビデンス:限定的49名の後ろ向き研究1件。抜け毛の量から効果を予測できるかは未確認参照: Bi 2025
AGAに2%または5%のミノキシジル外用を24週間使った49名の記録を、あとから調べた観察研究(Bi 2025)があります。抜け毛の量を治療前後に4週ごとに記録し、その数を補正した値で比べています。抄録に書かれている結果は次のとおりです。
- 最初の12週に、抜け毛の量の一時的な増加がみられた(「A temporary increase in the amount of hair shedding was detected in the first 12 weeks」)
- 増加が続いた期間は、2%群のほうが5%群より長かった
- 抜け毛の増え方の大きさは、5%群でだけダーモスコピー(頭皮の拡大観察)の所見の改善と相関した。2%群・5%群ともに、BASP分類(薄毛の型と程度の分類)の改善と関連があった
著者らは、抜け毛の増加の程度が効果の指標になりうると結論しています。ただし、この研究は49名を後ろ向きに調べたもので、抄録には薬を使わない比較対照の群についての記載がありません。抄録には、49名のうち何人に抜け毛の増加が起きたかの割合も書かれていません。この結果から「抜け毛が増えた人ほど効果が大きい」「増えなければ効果がない」と個人に当てはめることはできません。
ミノキシジル内服:115名のカルテ調査
エビデンス:限定的後ろ向きのカルテ調査1件。抜け毛の有無は本人の申告参照: Nohria 2024
ミノキシジルの飲み薬は、国内では高血圧の薬としてもAGAの薬としても承認されておらず、ガイドラインの推奨度はD(行うべきではない)です。米国の大学病院で低用量のミノキシジル内服(1日0.625〜2.5mg)を処方された、AGAと診断された18歳以上の115名(55%が女性)のカルテを後ろ向きに調べた観察研究(Nohria 2024)では、飲み始めたあとに新たに抜け毛を訴えたのは6名(5.2%)でした。抜け毛の有無は本人の申告で、それが一時的だったかどうかは調べられていません。著者らはこの割合がそれまでの報告(2.4〜22%)より低いと書いており、調べ方によって数字が大きく変わりうることがわかります。
初期脱毛と決めつけずに相談したいとき
エビデンス:限定的添付文書の注意事項。相談の線を試験で決めたものではない参照: リアップX5 添付文書
抜け毛が増えたとき、それが薬による一時的なものか、AGA以外の脱毛症か、別の副作用かを、自分で見分ける方法は資料にありません。リアップX5の添付文書は、AGA以外の脱毛症の人は使用しないよう書き、その例に「円形脱毛症、甲状腺疾患による脱毛等」を挙げています。次のような場合は、初期脱毛と決めつけずに医師か薬剤師に相談してください。
| こんなとき | 資料の記載 |
|---|---|
| 急激に抜ける、斑状(円形など)に抜ける、頭髪以外も抜ける | リアップX5 添付文書:使用開始後6ヵ月以内であっても「頭髪以外の脱毛、斑状の脱毛、急激な脱毛など」が見られた場合は、使用を中止し、医師又は薬剤師に相談。AGA以外の脱毛症の可能性がある |
| 使い始めてから脱毛の状態が悪くなっている | リアップX5 添付文書:使用開始後6ヵ月以内であっても「脱毛状態の悪化」が見られた場合は、使用を中止し相談 |
| 頭皮に発疹・赤み・かゆみ・かぶれ・ふけ・熱感がある | リアップX5 添付文書:副作用の可能性があるので、直ちに使用を中止し相談 |
| 胸の痛み、心拍が速くなる、頭痛・気が遠くなる・めまい、原因のわからない急な体重増加、手足のむくみ | リアップX5 添付文書:副作用の可能性があるので、直ちに使用を中止し相談 |
| 甲状腺の病気がある | リアップX5 添付文書:使用前に相談。甲状腺疾患による脱毛の可能性がある |
| 6ヵ月たっても、抜け毛や薄さが気になる | 3剤の添付文書はいずれも6ヵ月を効果を見直す時点に置いている。医師と続けるかどうかを判断する |
最後の行の6ヵ月は、効果を見直す時点として添付文書が置いているもので、「初期脱毛は6ヵ月以内におさまる」という意味ではありません。初期脱毛がいつまで続くかを示した数字は、今回確認した添付文書とガイドラインにはありませんでした。
市販のリアップX5を自分で買って使っている場合は、処方医がいません。上の表のとおり、添付文書は抜け毛の悪化に気づいたら使用を中止して相談するよう書いているので、購入した薬局の薬剤師か皮膚科に相談してください。AGAを扱う医療機関の違いはAGAのカテゴリページで確認できます。
量を増やす・やめるを、自分だけで決めない
抜け毛が増えると、量を増やしたくなったり、いったんやめたくなったりします。どちらについても、資料には次のように書かれています。
- 量を増やす :プロペシア錠の添付文書は「増量による効果の増強は、確認されていない」と書いています。リアップX5の添付文書も、決められた以上に多く、あるいは頻繁に使っても効果の増加はほとんどなく、副作用が起こる可能性が高くなるとしています
- やめる :ガイドラインはフィナステリドについて「内服を中止すると効果は消失する」と書き、リアップX5の添付文書も「使用を中止すると徐々に元に戻ります」としています。何ヶ月で戻るかという期間は、どちらにも書かれていません
一方で、上の表のように、リアップX5の添付文書には「中止して相談する」ことを求める場面もあります。抜け毛が増えたときは「続ける」とも「やめる」とも自分で決めず、処方医か薬剤師に状況を伝えて判断を仰いでください。フィナステリドの副作用の全体像はフィナステリドの効果と副作用にまとめています。
相談のときに役立つ記録
抜け毛が「増えた気がする」だけでは、医師も判断しにくいものです。次のような記録があると、状況を伝えやすくなります。
- 薬を使い始めた日、量を変えた日、飲み忘れた日
- 抜け毛が増えたと感じた時期と、そのときの体調(発熱、強いストレス、急な減量など)
- 頭頂部と生え際の写真(同じ場所・同じ明るさ・同じ角度で、月に1回)
- 頭皮のかゆみ・赤み、抜け方が斑状かどうか
リアップX5の添付文書は、6ヵ月使ったあとの見直しの目安に「抜け毛の程度(太い毛だけでなく細く短い抜け毛の減少も改善の目安となります)」を挙げています。抜けた毛の太さや長さも、メモに残しておくと相談の材料になります。時点ごとの経過の目安はAGA治療の効果はいつから?3ヶ月・6ヶ月・1年の経過で整理しています。
よくある質問
Q1. 初期脱毛が起きないと、効果が出ていないということですか?
初期脱毛の有無と効果の関係を示したデータは、今回確認した添付文書とガイドラインには見当たりませんでした。関連を調べた原著は49名の後ろ向き研究(Bi 2025)で、個人に当てはめられる結果ではありません。効果は、添付文書のとおり6ヵ月の時点で医師と見直します。
Q2. 初期脱毛はどのくらい続きますか?
ガイドラインと3剤の添付文書には、続く期間の数字がありません。ミノキシジル外用の49名の研究では最初の12週に一時的な増加が記録され、2%群のほうが長く続いていましたが、1件の小さな研究で、目安として使える数字ではありません。長く続くと感じたら、期間で区切らずに相談してください。
Q3. 抜け毛が増えたので、量を減らしたり休んだりしてもいいですか?
自分で決めずに、処方医か薬剤師に相談してください。フィナステリドは継続的な服用が前提の薬で、中止すると効果は消失するとガイドラインは書いています。ミノキシジル外用では、脱毛の悪化や斑状・急激な脱毛があれば中止して相談するよう添付文書が求めています。どちらに当たるかは、診察で確かめる必要があります。
Q4. フィナステリドからデュタステリドに切り替えると、また初期脱毛が起きますか?
切り替えたときの抜け毛について書いた記載は、今回確認した添付文書とガイドラインにはありませんでした。切り替えの考え方と2剤の違いはデュタステリドとフィナステリドの比較を参照し、切り替えるかどうかは医師と決めてください。
まとめ
- ガイドラインは、ミノキシジル外用の初期に休止期脱毛がみられることがあると書いている。頻度・期間・量の数字はない
- プロペシア・ザガーロ・リアップX5の添付文書には、使い始めに頭髪の抜け毛が増えるという記載が見当たらない
- 起こる仕組みの説明は、動物実験での観察をヒトに当てはめたもの
- 急な脱毛・斑状の脱毛・頭髪以外の脱毛・頭皮の症状は、初期脱毛と決めつけずに相談する
- 量を増やす・やめるは自分で決めず、処方医か薬剤師に相談する
改訂履歴
2026年9月27日:学会ガイドライン・添付文書・PubMed の抄録と照合して全面改訂しました。出典を確認できなかった数値(薬ごとの発生率、ピークの時期と続く期間、1日の抜け毛の本数と、それをもとにしたセルフチェックの基準)と、抄録に記載のない内容を Olsen らの2002年の試験に帰属させた記述、初期脱毛を効果のしるしとして扱う記述、開始から3ヶ月は続けるよう促す記述を削除しました。
参考文献
- 日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」日皮会誌. 2017;127(13):2763-2777(表1 CQ一覧と推奨度/CQ1 フィナステリド内服の解説=中止で効果消失/CQ3 ミノキシジル外用の解説=外用初期の休止期脱毛). https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/AGA_GL2017.pdf(2026年9月確認)
- プロペシア錠0.2mg/1mg 添付文書(2023年8月改訂 第4版。7. 用法及び用量に関連する注意/11. 副作用). https://www.info.pmda.go.jp/go/pack/249900XF1021_3_03/249900XF1021_3_03?view=body&lang=ja(2026年9月確認)
- ザガーロカプセル0.1mg/0.5mg 添付文書(2025年8月改訂 第2版。7. 用法及び用量に関連する注意/8.1/11.2 その他の副作用). https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00065940(2026年9月確認)
- リアップX5 添付文書(大正製薬、2019年7月11日版。用法・用量/してはいけないこと/相談すること/その他の注意). https://www.catalog-taisho.com/content/dam/selfmedication/jp/ja/riup/images/06724/pdf/06724_ProductPDF_jp.pdf(2026年9月確認)
- Bi 2025: Bi L, et al. Whether the transient hair shedding phase exist after minoxidil treatment and does it predict treatment efficacy? A retrospective study in androgenetic alopecia patients. J Dermatolog Treat. 2025;36(1):2480739.(PMID: 40122142) https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40122142/
- Nohria 2024: Nohria A, et al. Combating "dread shed": The impact of overlapping topical and oral minoxidil on temporary hair shedding during oral minoxidil initiation. JAAD Int. 2024;15:220-224.(PMID: 38707927) https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38707927/
- Messenger 2004: Messenger AG, Rundegren J. Minoxidil: mechanisms of action on hair growth. Br J Dermatol. 2004;150(2):186-194.(PMID: 14996087) https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/14996087/
免責事項 :本記事は日本皮膚科学会のガイドライン、医薬品の添付文書、査読論文等の公開資料をもとにした一般的な情報提供であり、診断・治療に代わるものではありません。医師個人による執筆・監修は行っていません。学会ガイドライン等の公開資料を編集部が整理しています。効果・副作用には個人差があり、効果を保証するものではありません。薬の開始・変更・中止は自己判断せず、必ず医師に相談し、診察のもとで判断してください。記載内容は2026年9月時点の公開資料に基づきます。
