足の臭いの主な原因物質として報告されているのはイソ吉草酸 という脂肪酸です[1][2]。においのもとを知ると、どこに手を打てばよいかが分かります。
この記事では、足の臭いができる仕組みから具体的な対策まで、論文と日本皮膚科学会の資料をもとに説明します。研究で確かめられていない方法は、そう書いています。
足の臭いが発生するメカニズム
原因物質:イソ吉草酸とは
資生堂の研究者らが、足の臭いが強い人と、臭いが弱い人またはない人の靴下と足から短鎖脂肪酸を取り出して調べた研究(Kanda ら、1990年)では、足の臭いが強い人で短鎖脂肪酸が多く、イソ吉草酸は足の臭いがある人の全員から見つかり、臭いが無い人からは見つかりませんでした[2]。花王の研究者らの研究(Ara ら、2006年)は、イソ吉草酸は皮膚の常在菌である表皮ブドウ球菌が、汗に含まれるアミノ酸(ロイシン)を分解してできると報告しています[1]。どちらの抄録にも、調べた人数は書かれていません。イソ吉草酸は、悪臭防止法施行令が定める特定悪臭物質の一つでもあります[3]。
イソ吉草酸は次のような流れでできます。
- 足裏の汗 :足の裏を含め全身にある汗腺(エクリン腺)は、暑さだけでなく精神的な緊張でも汗を出す[4]
- 汗の成分:汗に含まれるロイシンが、菌の「材料」になる[1]
- 常在菌による分解 :表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)がロイシンを分解し、イソ吉草酸ができる[1]
常在菌の役割
足の臭いとの関係が報告されているのは、次の菌です。
- Staphylococcus epidermidis(表皮ブドウ球菌) :汗に含まれるロイシンを分解してイソ吉草酸をつくる(Ara ら、2006年)[1]
- Bacillus subtilis(枯草菌):足の臭いが強い人の足裏から見つかり、においの強さと関係していた(Ara ら、2006年。著者は花王の研究所の所属)[1]
香料会社の研究者らの総説は、汗は出た直後はほとんどにおわず、汗のにおいはふつう、出た汗を皮膚の菌が代謝するところから生じるとしています[5]。体のにおいについての別の総説も、汗と皮膚の菌とにおいの関係を同じ見方でまとめています(Kanlayavattanakul & Lourith、2011年)[6]。
臭いを悪化させる要因
靴の中の温度と湿度
先の総説は、靴の中は温度と湿度がほどよく保たれ、皮膚の菌が増えやすい環境だとしています[5]。日本皮膚科学会の皮膚科Q&Aは、多汗症で湿った手足は、あせもができたり、カビや細菌の感染を起こしやすいとしています[4]。
ストレスによる精神性発汗
手のひらや足の裏に多量の汗が出る多汗症(原発性局所多汗症)では、精神的な緊張で汗が増え、症状の重い人ではしたたり落ちるほどの汗が出ることもあります。昼間に汗が多く、睡眠中は止まります[4]。
足裏が硬い・ひび割れる
日本皮膚科学会の皮膚科Q&Aは、足の裏全体が硬くなり、ときにひび割れを伴う「角質増殖型」の水虫(足白癬)があり、季節に関係なく、かゆみは無いとしています[7]。似た症状の皮膚の病気はいくつもあり、見ただけでは診断がつかないことが多いので、真菌の検査で確かめる必要があるとされています[7]。足裏が硬い・ひび割れる状態が続くときは、自分で削る前に皮膚科で相談してください。
足のケア|洗い方
足の洗い方
洗い方で足の臭いが減るかを比べた研究は、この記事で確かめた資料には見当たりませんでした。以下は、日本皮膚科学会の皮膚科Q&Aが水虫(足白癬)の予防として書いている洗い方[7]と、薬用石けんの効能の範囲[8]です。
- 泡でなでるように洗う :石けんをよく泡立て、なでるように洗う。角質をむしったり、軽石などで擦りすぎて傷がつくと、かえって水虫になりやすくなる[7]
- 薬用(医薬部外品)の石けん・ボディソープ :殺菌剤を主な成分とする薬用石けんに認められる効能の範囲は「皮膚の清浄・殺菌・消毒。体臭・汗臭及びにきびを防ぐ。」[8]。殺菌成分の例にイソプロピルメチルフェノールがある[9]
- 洗った後はよく乾かす:指の間まで水気をふき取る
靴と靴下の対策
2026年10月10日に PubMed で「(sock OR socks OR insole OR insoles) AND (foot odor OR foot odour OR foot malodor OR foot malodour OR bromodosis)」を検索した20件に、靴下やインソールでふつうの足の臭いが減るかを調べた試験はありませんでした(あったのは、点状角質融解症という別の皮膚の病気を対象にした靴下の試験や、水虫を対象にした靴下の試験など)。以下は、皮膚科Q&Aが水虫の予防として書いている靴の手入れです[7]。
靴のケア
- 毎日同じ靴を履かない :何足か用意して、毎日同じ靴を履かないようにする[7]
- 洗える靴は洗って乾かす:水でゆすぐだけでは靴の中の白癬菌は除ききれない。洗えない革靴は中を拭いてから乾かす[7]
- 足に合った靴を選ぶ:長時間履く靴や足に合わない靴は、足が蒸れて擦れる。履き替えられるときはサンダルなどで足を乾かす[7]
靴下
汗をかいた靴下は替えて、足を乾いた状態に保ちます。靴下の素材や形でにおいが変わるかは、上の検索の範囲では確かめられていません。
制汗・消臭アイテムの活用
ミョウバン水について
ミョウバン(硫酸カリウムアルミニウム) の水溶液は、家庭で作る足のにおい対策として紹介されることがあります。2026年10月10日に PubMed で「alum AND (foot OR feet OR plantar) AND (odor OR odour OR malodor OR malodour OR bromodosis)」を検索した結果は0件で、足のにおいや汗にどの程度効くかを調べた研究は見つかりませんでした。皮膚科Q&Aは、水虫の民間療法について、効果が不明なうえにかぶれを起こす人も少なくないとしています[7]。肌に合わないときは使うのをやめてください。
制汗剤・デオドラント
制汗剤・デオドラントには、医薬部外品(腋臭防止剤)として「わきが(腋臭)、皮膚汗臭、制汗」の効能が認められたものと、化粧品のものがあります[8]。足に使えるかどうかは製品の表示で確かめてください。足の臭いへの効果を調べた試験は、この記事では引いていません。主な成分は次のとおりです。
- アルミニウムの塩(塩化アルミニウムなど) :汗の出口をふさいで汗を減らし、においの原因菌の増殖も抑えるとされる。市販の制汗剤では、汗の多い人には効果が十分でないこともある(Kanlayavattanakul & Lourith、2011年)[6]
- イソプロピルメチルフェノール(IPMP):殺菌成分[9]
改善しない場合の医療的アプローチ
足の多汗症の治療
足の汗が多くて困るときは、多汗症(原発性足底多汗症) の可能性があり、皮膚科で相談できます。日本皮膚科学会の皮膚科Q&A(原発性局所多汗症診療ガイドライン2023年改訂版の図を引用)では、足の裏の治療は次のように説明されています[4]。
- 塩化アルミニウムの外用(第一選択) :保険適用外の薬として、20〜50%のアルコール溶液または水溶液が使われる。寝る前に塗り、効果が出るまで2〜3週間かかる。やめると再発することがある。汗が多い場合は塗ったあとに覆う密封療法も行う。副作用として刺激性の皮膚炎がある[4]
- イオントフォレーシス(第一選択) :水道水を入れた容器に足の裏を浸して5〜20mAの直流電流を流す方法。1回20〜30分を8〜12回行うと汗が減り、その後も週1〜2回続けたほうがよいとされる。保険診療で受けられる[4]
- A型ボツリヌス毒素の注射(第二選択) :手のひらやわきの注射では、1週間ほどで汗が減り、約6か月続くとされる。保険が使えるのは重度の腋窩(わき)多汗症で、足の裏には保険が使えず、数万円以上の医療費がかかる[4]
水虫(白癬菌感染)の確認
水虫(足白癬)の症状は、足の指の間がふやけて白くなる、足の裏に小さな水ぶくれができる、足の裏全体が硬くなるなどさまざまで、かゆくない人も多いとされています[7]。かゆみの有無では判断できず、真菌の検査で診断します[7]。皮むけや水ぶくれ、ふやけが続くときは、皮膚科で検査を受けてください。
よくある質問
Q. 足の臭いは体質で、改善できないのでは?
A. においは、皮膚の菌が汗の成分を分解してできると報告されています[1]。足を洗ってよく乾かす、靴を替えて乾かす、制汗剤を使う、といった手入れが足の臭いをどの程度減らすかを比べた研究は、この記事で確かめた資料には見当たりませんでした。足の汗が多い場合は、皮膚科で多汗症の治療を相談できます[4]。
Q. 重曹足湯は効果がありますか?
A. 2026年10月10日に PubMed で「(sodium bicarbonate OR baking soda) AND (foot OR feet OR plantar) AND (odor OR odour OR malodor OR bromodosis)」を検索した結果は1件で、重曹の足湯を調べたものではありませんでした(1人の足に芳香油を含む粉末を使った症例報告)。重曹の足湯で足のにおいがどの程度減るかは分かっていません。
Q. 靴の中に10円玉を入れると臭いが消えるというのは本当ですか?
A. 2026年10月10日に PubMed で「copper AND (shoe OR shoes OR footwear) AND (odor OR odour OR malodor)」を検索した結果は0件で、10円玉(銅)で靴のにおいが減るという話の裏づけは見つかりませんでした。
改訂履歴
2026年10月10日:本文の数字と事実に、参考文献の番号を 1 つずつ付け、参考文献に研究の種類・人数・限界を添えました。イソ吉草酸が足の臭いのある人の全員から見つかった研究(Kanda ら、1990年)と、汗は出た直後はほとんどにおわないとする総説(Yamazaki ら、2010年)を参考文献に加えました。「角質ケア」の節の「軽石やフットスクラブで古い角質を落とす」は、日本皮膚科学会の皮膚科Q&Aが「軽石などで擦りすぎて角層に傷がつくと、かえって足白癬になりやすくなる」としているため削除し、足裏が硬くひび割れる水虫(角質増殖型)があることと、皮膚科での検査を書きました。出典の無かった記述(「足の臭いは多くの男性が抱える悩み」、「爪の周囲も歯ブラシなどでブラッシングする」、角質を落としたあとの保湿、「2〜3足をローテーション」、消臭インソールの活性炭・ゼオライト、靴用乾燥剤、靴下の素材・五本指・抗菌加工・「同じ靴下を2日以上履かない」、銀イオン、重曹が酸性のイソ吉草酸を中和するという説明と「汗を減らす働きはありません」、「足の臭いが気になる人で水虫が一緒にあることもある」)は削除し、靴の手入れは皮膚科Q&Aの水虫の予防の記載に合わせました。ミョウバン水・重曹・10円玉について研究が見つからなかったことは、PubMed の検索の範囲を添えて書き直しました。イオントフォレーシスの「その後も週1〜2回続けると効果を保ちやすい」は、皮膚科Q&Aの書き方(行ったほうが良い)に合わせ、ボツリヌス毒素の費用の「高額」は「数万円以上」に直しました。塩化アルミニウムの剤形を皮膚科 Q&A の記載(アルコール溶液または水溶液)に合わせ、制汗剤の見出しから「足用」を外して足への使用可否は表示で確かめるようにし、順位づけの助言を削りました。
2026年10月5日:「足裏には1cm²あたり約300個のエクリン汗腺があり1日に約200mLの汗をかく」「靴の中は温度30〜35℃・湿度90%以上」などの出典を確かめられなかった数字と、ミョウバン水の効能と作り方は削除しました。足の多汗症の治療は、「塩化アルミニウム20%は処方箋で入手できる」「ボツリヌス毒素の効果は4〜6か月」を、日本皮膚科学会の皮膚科Q&A(保険適用外の20〜50%溶液、約6か月・足の裏は保険適用外)に合わせて直しました。においに関わる菌は Ara ら(2006年)の内容(表皮ブドウ球菌と枯草菌)に合わせ、参考文献の Kanlayavattanakul & Lourith の雑誌名・巻号を PubMed に合わせて直しました。
参考文献
- Ara K, Hama M, Akiba S, Koike K, Okisaka K, Hagura T, Kamiya T, Tomita F. Foot odor due to microbial metabolism and its control. Canadian Journal of Microbiology. 2006;52(4):357-364. (官能試験と菌の分離・培養の研究。調べた人数は抄録に書かれていない。著者は花王の研究所の所属。抄録のみ確認) PubMed: 16699586
- Kanda F, Yagi E, Fukuda M, Nakajima K, Ohta T, Nakata O. Elucidation of chemical compounds responsible for foot malodour. British Journal of Dermatology. 1990;122(6):771-776. (足の臭いが強い人と弱い・無い人を比べた分析。調べた人数は抄録に書かれていない。著者は資生堂の研究所の所属。抄録のみ確認) PubMed: 2369557
- 悪臭防止法施行令(昭和47年政令第207号)第1条(特定悪臭物質)二十二 イソ吉草酸. (法令。2012年4月1日施行の改正を反映した版で確認) e-Gov 法令検索(2026年10月10日確認)
- 日本皮膚科学会「皮膚科Q&A 汗の病気―多汗症と無汗症―」Q4・Q5・Q7〜Q11(監修 横関博雄。Q7 は原発性局所多汗症診療ガイドライン2023年改訂版の図を引用). (学会の一般向け解説。治療の順序はガイドライン2023年改訂版による。費用・保険の扱いは改定されることがある) 皮膚科Q&A(2026年10月10日確認)
- Yamazaki S, Hoshino K, Kusuhara M. Odor associated with aging. Anti-Aging Medicine. 2010;7(6):60-65. (総説。文献の探し方は書かれていない。著者は高砂香料工業・静岡県立静岡がんセンター研究所の所属。本文のPDFで確認) J-STAGE(2026年10月10日確認)
- Kanlayavattanakul M, Lourith N. Body malodours and their topical treatment agents. International Journal of Cosmetic Science. 2011;33(4):298-311. (総説。文献の探し方と件数は抄録に書かれていない。抄録のみ確認) PubMed: 21401651
- 日本皮膚科学会「皮膚科Q&A 白癬(水虫・たむしなど)」Q10・Q11・Q12・Q18・Q25・Q26(監修 望月隆). (学会の一般向け解説。洗い方・靴の手入れは水虫の予防としての記載で、足の臭いへの効果を示したものではない) 皮膚科Q&A(2026年10月10日確認)
- 日本化粧品工業会「化粧品等の適正広告ガイドライン 改訂α版」(2026年7月24日)〔表1〕医薬部外品の効能又は効果の範囲・〔表2〕薬用化粧品の効能又は効果の範囲. (業界団体の広告ガイドライン。効能の範囲は表示・広告の基準で、製品の効果の大きさを示すものではない) 日本化粧品工業会のPDF(2026年10月10日確認)
- マンダム「体臭/制汗科学」体臭/制汗科学関連リリースの一覧(「2種の殺菌成分[塩化リゾチーム](酵素)と[イソプロピルメチルフェノール]」). (会社の研究紹介のページ。査読論文ではない) マンダムのページ(2026年10月10日確認)
