AGA 治療の経口薬として、日本で承認されているのはフィナステリドとデュタステリドの 2 種類です。「どちらを選ぶべきか?」は AGA 治療を始めるすべての男性が直面する選択です。本記事では、この 2 つの薬剤を 5 つの観点で比較し、編集部が判断基準を整理しました。
2 つの薬剤の概要
フィナステリド:日本で最初に承認された AGA 治療薬
フィナステリドは、米国 FDA が 1997 年、日本の厚生労働省が 2005 年に AGA 治療薬として承認した、AGA 経口治療の第一選択薬 です。商品名はプロペシア(先発品)で、ジェネリックも豊富に流通しています。
デュタステリド:より強力な阻害効果
デュタステリドは、もともと米国で前立腺肥大症の治療薬として承認された薬剤です。日本では 2015 年に AGA 治療薬として承認され、商品名ザガーロとして処方されるようになりました。フィナステリドより新しく、AGA 治療における「より強力な選択肢」として位置付けられています。
① 作用機序の違い:阻害する酵素のタイプ
5α-リダクターゼには I 型と II 型がある
AGA の原因物質である DHT は、テストステロンが 5α-リダクターゼ という酵素で変換されて生成されます。この酵素には2つのタイプ(アイソザイム)があります。
- I 型:皮脂腺、肝臓、後頭部・側頭部の毛包に分布
- II 型:前頭部・頭頂部の毛包、前立腺に分布
フィナステリド:II 型のみを阻害
フィナステリドは II 型 5α-リダクターゼを選択的に阻害します。AGA の主な発症部位(前頭部・頭頂部)に II 型が多く分布しているため、効率的に DHT 産生を抑えられます。
デュタステリド:I 型と II 型の両方を阻害
デュタステリドは I 型と II 型の両方を阻害します。これにより、II 型のみを阻害するフィナステリドより体内の DHT 濃度をより強力に低下 させることができます。
実際の数値で比較すると、フィナステリド 1mg/日は血中 DHT を約 70% 低下させるのに対し、デュタステリド 0.5mg/日は約 90% 以上低下させると報告されています(Olsen 2006)。
② 効果の違い:直接比較試験データ
Olsen 2006:24 週時点でデュタステリドが優位
デュタステリドとフィナステリドを直接比較した重要な研究が、Olsen らが 2006 年に Journal of the American Academy of Dermatology に発表した二重盲検試験です。21〜45 歳の AGA 男性を対象に、デュタステリド 0.5mg、フィナステリド 5mg、デュタステリド 0.05mg、デュタステリド 0.1mg、デュタステリド 2.5mg、プラセボの 6 群で比較しました。
- 24 週時点で、デュタステリド 2.5mg 群はフィナステリド 5mg 群より 有意に毛髪数が増加
- デュタステリド 0.5mg 群はフィナステリド 5mg 群と同等以上の効果
- プラセボ群との比較では全実薬群で有意な改善
日本人を対象にした試験:6ヶ月時点で 1.6 倍の毛髪数増加
日本人男性を対象とした第Ⅲ相試験(Tsuboi 2009)では、デュタステリド 0.5mg/日を 26 週間服用した群は、フィナステリド 1mg/日服用群と比較して毛髪数の増加が約 1.6 倍 であったと報告されています。
ガイドラインでの位置付け
日本皮膚科学会のガイドライン 2017 年版では、フィナステリドとデュタステリドはともに 推奨度A(行うよう強く勧める) と評価されています。エビデンスの蓄積量はフィナステリドが上ですが、効果の強さではデュタステリドが優位という整理になっています。
③ 副作用の違い
共通の副作用
どちらの薬剤も同じ作用機序(5α-リダクターゼ阻害)のため、副作用のプロフィールは類似しています。主な副作用は性機能関連です。
- 性欲減退
- 勃起機能不全(ED)
- 射精障害
- 精液量の減少
- 肝機能障害(稀)
発生率の比較
添付文書ベースの副作用発生率は以下のとおりです(厳密な数値は試験デザインによって変動するため目安)。
- フィナステリド:性欲減退 約 1.8%、ED 約 1.3%
- デュタステリド:性欲減退 約 4.0%、ED 約 4.3%、射精障害 約 1.0%
デュタステリドの方が性機能関連の副作用発生率がやや高い傾向にあります。これは I 型・II 型両方を阻害することで、体内の DHT が大きく低下することと整合的です。
共通の禁忌
どちらも 20 歳以上の男性専用です。女性(特に妊娠中)・小児 には禁忌で、肝機能障害のある方は医師の慎重な判断が必要です。
④ 費用の比較
2026 年の月額相場
どちらも保険適用外の自由診療で、クリニックによって価格は異なります。
- フィナステリド ジェネリック:月 1,500〜3,500 円
- フィナステリド 先発品(プロペシア):月 6,000〜8,000 円
- デュタステリド ジェネリック:月 3,000〜5,500 円
- デュタステリド 先発品(ザガーロ):月 8,000〜10,500 円
全体としてデュタステリドの方が約 2,000〜3,000 円高い相場感です。年間ベースでは、フィナステリド・ジェネリックが 18,000〜42,000 円、デュタステリド・ジェネリックが 36,000〜66,000 円になります。
⑤ どちらを選ぶべきか:判断基準
フィナステリドが向いている人
- 初めて AGA 治療を始める方(実績データが豊富で安心)
- 進行抑制が主目的で、長期データの安全性を重視したい方
- コストを抑えたい方(ジェネリックで月 1,500〜3,500 円)
- 性機能関連副作用のリスクを最小化したい方
デュタステリドが向いている人
- フィナステリドを 1 年以上服用しても効果が不十分だった方
- 頭頂部の薄毛が中等度以上で、より強力な進行抑制を求める方
- I 型 5α-リダクターゼも抑えたい方(後頭部・側頭部にも作用)
- 追加コストを許容できる方(月 3,000〜5,500 円)
切り替えのタイミング
「フィナステリドを 1 年継続したが、効果が不十分」と感じた場合、 デュタステリドへの切り替え が一般的な選択肢になります。最初からデュタステリドを選ぶより、まずフィナステリドで様子を見て、必要に応じて切り替えるのがコスト・副作用リスク両面で合理的です。判断は医師との相談で決めるのが原則です。
まとめ:判断は「効果の強さ」と「副作用許容度」のバランス
デュタステリドはフィナステリドより 効果が強く、副作用発生率もやや高く、コストもやや高い 。これがすべての違いを集約した整理です。
- 初めての AGA 治療:フィナステリドから始めるのが標準
- 効果不十分・重症:デュタステリドへの切替を医師と相談
- 副作用が気になる:フィナステリドの方がリスクが低い
- コスト:フィナステリドが月 2,000〜3,000 円安い
- 長期データの蓄積:フィナステリドが優位
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参考文献
- Olsen EA, et al. The importance of dual 5alpha-reductase inhibition in the treatment of male pattern hair loss. J Am Acad Dermatol. 2006;55(6):1014-1023
- Tsuboi R, et al. Phase III trial of dutasteride for the treatment of male pattern hair loss. J Dermatol. 2009
- 日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版」
- プロペシア錠 / ザガーロカプセル 添付文書




